2014被災地医療支援 福島県:早川 聖子

2013年6月、福島県いわき市総合磐城共立病院への麻酔科医派遣の依頼が来ていると聞き、手を上げました。一度は希望が叶わず、日々の忙しさに追われていた頃、再度麻酔科医派遣のお話を頂き、是非行きたいと意志を伝えたことを覚えています。

2013年1月の最終週に福島県いわき市総合磐城共立病院で麻酔支援をさせて頂きました。矢内先生をはじめ、医局の先生方、看護師の方々も皆笑顔で明るく、素敵な職場だと思いました。代わる代わる来る、麻酔の仕方も違う私たちを快く迎え入れて下さいました。初日、10ヶ月の鎖肛症例の麻酔を頼まれました。藤田でも小児の麻酔は日常的にあるため、いつも通り、無事に親元に返すことを意識して麻酔をかけました。かけた後、何度も繰り返し矢内先生からお礼を言われた時に、なぜここまで感謝して頂けるのだろうと思いました。しかしすぐに意味がわかりました。医局でお話をしている際、先生方の予定が書いてあるホワイトボード(要は当直表)が目に入った時、愕然とし、お礼を言われた意味を理解しました。そこには矢内先生が3日に2回当直をしている現状がありました。部長は当直明けであっても、朝から麻酔をかけ、外来をし、術前をし、症例のデータを拾い、術前用紙にデータや所見等を書き込んでいました。自分がかける麻酔以外も全てです。そんな忙しい中で、私の為に歓迎会を開いてくれました。その際沢山お話が出来ました。地震が起きたとき揺れが次第に大きくなり、麻酔器を押さえていないと手術台から離れてしまうといった状況、医局は本が散乱し、医局にいた先生は危うく圧死しそうになったこと。手術室内の安全確認に行こうとしたが、中央通路には土埃が舞い上がっていたことを話して下さいました。その時行われていた手術内容を病院長へ連絡し、病院長は中止できる手術は中止して患者さんの安全を保つことを指示したようです。震災後、放射能の話により街はゴーストタウンとなったこと。いわき市は内陸部なので海岸近くに住んでいた人が移動し老人人口が増え、それにより患者さんが増え、手術件数が増えたこと。何故麻酔支援があるか、麻酔支援は来年度からないこと。麻酔科の厳しい現状等を知りました。頂いた資料に目を通すと、震災を経験しなければ分からないことや、先生方の思い・感じたことを読んで、胸が熱くなりました。藤田に戻ってきた後も、私がいた週にあった症例の経過等をメールで教えて頂きました。

少しでも役に立てばと思い行った支援でしたが、逆に多くのことを勉強させて頂きました。麻酔支援のお話を持ってきて頂け、支援に行かせて下さり本当にありがとうございました。福島県いわき市総合磐城共立病院で多くの方々と出会え、本当に幸せです。

最後になりますが震災で被災された皆様,ならびに現在も復興に向け努力を続けている皆様方のお心が少しでも癒されることをお祈り申し上げます。

藤田保健衛生大学医学部 麻酔・侵襲制御医学講座  早川 聖子