経”空腸”栄養

救急・集中治療を要する患者の栄養状態は、その原因疾患や経過により様々ですが、いずれにせよ、侵襲が強いと早期に低栄養状態になります。低栄養状態は免疫状態や感染防御、創傷治癒の観点のみならず、呼吸筋の機能低下の点からも好ましくありません。「全ての疾患に効く薬はないが、栄養は全ての疾患に効く」と言われるように栄養管理は重症管理の大きな柱です。人工呼吸管理が長期化すると栄養状態が不良となりやすく、元の疾患が治癒しにくくなるばかりか、呼吸筋も萎縮するため、人工呼吸器からの離脱が困難となります。また免疫不全から感染症を併発し、致命的となりやすくなります。

2002年のアメリカ静脈経腸栄養学会(ASPEN)のガイドラインで積極的な経腸栄養が推奨され、本邦でもこの流れに沿った栄養管理が行われつつあります。集中治療を要するような重症患者でも、腸管が使える限りできるだけ経腸栄養を行うことが勧められています。

腸管からの栄養管理を行うことの利点として以下のものが挙げられます。

腸管から栄養管理を行うことの利点
  • 経済的な理由
  • バクテリアルトランスロケーション(BT)の予防
  • Immunonutririon(免疫賦活栄養)の施行が容易
  • 肝機能の温存(門脈を介した生理的な栄養、胆汁鬱滞が少ない。)
  • 血糖コントロールが容易(小腸持続投与)
  • 急性血液浄化療法との相性が良い
  • 積極的な呼吸リハビリが可能(経空腸投与)

従来,ICUでは投与した水分・栄養素を厳密に把握することを理由に静脈栄養(PN)が多用されてきました。経腸栄養を発症早期から導入することはバクテリアルトランスロケーション(BT)予防のみならず,感染症の合併率の低下や入院期間も短縮する可能性が示唆されています。

一方で経腸栄養の一番の障害は腸管の蠕動抑制です。重症病態下では胃の蠕動抑制(gastroparesis)が顕著で,これが経鼻胃管栄養の障害(intolerant of gastric feedings)となります。胃の蠕動抑制(gastroparesis)に対応するためには,栄養チューブを幽門を越えて挿入し,胃よりも蠕動抑制の少ない小腸に直接栄養を流す経小腸栄養を行う必要があります。

空腸に栄養チューブの先端を留置すれば、経腸栄養剤の逆流による合併症を最小限にできます。専用ポンプを用いた少量持続投与を行うことにより、逆流による誤嚥が防げ、TPNと同じような経腸的高カロリー栄養が達成可能で、血糖コントロール、水分管理が容易となります。処置による経腸栄養の中断も必要がありません。造影剤のガストログラフィンを20ml程度投与してから経腸栄養を開始します。翌日の腹部レントゲンでどこまで進行しているかが確認することで、どれぐらい腸管が動いているかを判断することができます。

挿入中の造影所見

挿入中の造影所見1

挿入中の造影所見2

実際には経腸栄養用のポンプを用いて、30ml/h程度から開始し、吸収が良好であれば12時間から24時間ごとに5~10ml/hずつ増量していきます。重症期にすべてのエネルギー投与を経腸栄養で無理に行う必要はなく、必要ならば、経静脈栄養と併用することもありますが、ポンプを用いて持続投与すれば必要カロリーまで増量することも十分可能です。この場合、カテコラミンの持続投与や中心静脈圧の測定が必須でなくなれば、中心静脈カテーテルを早期に抜去することが可能となるので、カテーテル感染のリスクも軽減できます。