麻酔

豊富/多様な症例

年間約12500件、そのうち麻酔科管理症例約6700件と非常に豊富な症例を誇っています。

当施設では23室の中央手術室をもち、年間約12500件、そのうち麻酔科管理症例約6700件と非常に豊富な症例を誇っています。当施設は大学病院としての役割とともに、地域での市民病院の役割も担っております。そのため、市中病院で行われることが多い一般的な手術も豊富で、麻酔科専門医の取得に必要な、小児、帝王切開、心臓血管外科、胸部外科、脳神経外科手術の症例数は複数の専攻医が十分に症例数を満たすことが可能です。加えて、大学病院という特性から、市中病院では経験できないような稀な症例や、他施設に先駆けて行っている先進医療も数多く経験できます。

例えば、ロボット支援下手術には全国に先駆けて2009年より取り組み、2015年には3台目のdaVinci Xiも仲間入りしました。現在保険収載されている泌尿器科領域のみでなく、食道や胃、膵臓癌などの消化器外科領域、婦人科領域、呼吸器外科領域など、広い分野でダヴィンチ手術が行われています。また、移植手術にも積極的に取り組んでおり、脳死下膵腎同時移植は日本でも有数の症例数を誇っているほか、腎移植、肝移植も行っています。

さらに、全身状態のリスクが非常に高い症例や、高侵襲の長時間手術など、一般病院ではなかなか経験できないような症例も多く経験することができます。透析や重症心疾患、低肺機能などを合併している患者の麻酔や、血行再建術を必要とする長時間の悪性腫瘍手術、超低出生体重児の麻酔では、術中のみならず術後管理にも注意を要します。これらの症例に対しても、術中から術後へのシームレスな全身管理を上級医の指導の下で数多く経験することで、重症患者に対する麻酔管理・集中治療管理が自然に身に付きます。

もちろん、術後鎮痛に配慮した術中からの麻酔管理として、超音波ガイド下神経ブロックや硬膜外麻酔を中心としたmultimodalな鎮痛法に積極的に取り組んでおりますので、これらの手技も数多く経験可能です。

術前~術後までの全身管理

術前~術後までの全身管理 について

手術はいわば「予定された外傷」であり、その外科的侵襲から生体を防御するために行う行為が「麻酔」です。全身麻酔のみならず、硬膜外麻酔、脊髄クモ膜下麻酔、末梢神経ブロック、局所麻酔など、手術侵襲に合わせた麻酔薬の投与に加え、体液・輸液管理、出血や心抑制などに対する大胆かつきめの細かい循環管理、患者の状態に合わせた人工呼吸管理などによって、手術の侵襲から適切に恒常性を損なうことがないように管理することが必要とされます。これらの全身管理は、手術中のみでなく手術前から手術後におけるまでシームレスに継続することが重要です。

まず、入院前に周術期管理センターでリスク評価を行い、必要であれば検査を追加します。精査の結果、患者さんの全身状態から、麻酔及び手術が安全に行えるか否かを判断します。その結果、時には予定された麻酔方法の変更、手術の延期や中止の決断をしなければならない事もあります。

リスクの高い症例、手術の難渋が予想される症例等は、主科側、麻酔科側の両者が注意すべき点、必要な事前準備等を情報共有し、万全な状態で手術を迎える事が出来るよう協力し合います。事前準備が十分にできない緊急手術の場合も同様に、可能な限りリスクマネジメントをしっかり行い手術に臨みます。

手術中の全身管理は麻酔科医の真骨頂でしょう。当院は症例が豊富である分、リスクの高い症例の麻酔を担当する機会も多くあります。重症心疾患、低肺機能、透析患者、新生児、超高齢者、そして緊急手術も多いため、循環管理、呼吸管理に難渋する事もしばしばです。しかし、日頃から基本的な麻酔において全身管理の基礎をしっかりと身に付けておく事やICUでの全身管理を学ぶ事で、ハイリスク手術や緊急手術にも対処出来る知識と技術が身に付いてゆきます。当院は麻酔科スタッフが多く、経験豊富な上司、信頼できる仲間の知恵を借り、切磋琢磨し合いながら日々の麻酔業務に従事しています。複数名で協力しながら麻酔に臨む機会も少なくありません。

術後は疼痛コントロールも含めた全身管理を行います。術後回診も術前回診と同様に重要です。ハイリスク手術や長時間手術の症例は、術後にICUで管理をします。麻酔における全身管理は、ICUでの重症患者の全身管理に繋がります。術後患者が急変する事もあれば、ICU入室中の患者が緊急手術をする事もあります。

手術前から手術後まで、途切れなく全身管理を行うことは、麻酔科医としての義務であり、それこそが醍醐味であると、我々は考えております。

多職種連携による周術期管理センター

豊富な全身管理の知識に裏打ちされたきめ細やかな「麻酔」と言う名の術中全身管理です。

我々の行う麻酔は、豊富な全身管理の知識に裏打ちされたきめ細やかな「麻酔」と言う名の術中全身管理です。いかなる困難な症例でも安全に行うために個々の症例のあらゆるリスクを想定し、あらかじめ対応策を考えておくことで、最悪の事態を回避できる可能性が高くなります。

この患者リスクの評価を行うことを目的としているのが術前診察です。麻酔管理中の偶発症例の発生と術前の患者の全身状態との間には、深い関係があるため術前の患者評価が重要であるとされます。しかし、近年国家が掲げる入院期間短縮の方向性のために、入院後の術前準備期間は十分ではなく、追加検査が必要になった場合には術直前に手術を中止せざるを得ないなどの問題が発生していました。また、従来の個々の担当麻酔科医が個別に患者のベットサイドに訪問する方法では、大病院ゆえに訪床の際の動線が長く、また訪床時に患者が不在の場合があるなど、麻酔科医の業務効率不良も問題となっていました。

そこで当教室では、2015年3月より、麻酔科医を核として多職種による周術期管理センターを立ち上げ、2016年1月からは全科に対応しています。周術期管理センターの構成は、麻酔科医、看護師、薬剤師、歯科衛生士、および事務です。現在、術後合併症の減少を目的として栄養士の参画を準備しているところで、今後は栄養士による術前栄養指導も加わる予定です。

周術期管理センターの受診手順は図1のとおりです。周術期管理センターの受診時期は、予定手術の約2~4週間前とし、事前に薬剤師が持参薬を調べ、術前中止薬の有無を確認しています。外来受診当日はまず、手術室看護師が、全身麻酔の手術前日から術後の病室に帰るまでの大まかな流れ、麻酔の危険性・合併症についてパンフレットを用いて集団オリエンテーションを行っています。次に歯科衛生士が口腔内の診察をし、歯科医師の診察の必要性を判断します。麻酔時の歯牙損傷の防止や周術期肺合併症の減少に役立っています。その後、再度個別に看護師が問診し、患者のリスクの確認や不安の軽減、麻酔看護に必要な診察を行います。最後にそれらの情報に加え、各種検査結果をもとに麻酔科医が問診・診察し内科・外科の知識を用いて最適な麻酔法を選択し、最終的な麻酔への同意を得ています。その際に精査の必要な所見などが見つかれば、周術期管理センターから他科と連携をとり追加検査を行っています。

このように、周術期管理センターに術前診察を集約することで、周術期医療安全の向上や、術直前の手術中止の減少、麻酔科-他科間や麻酔科医-患者間の信頼関係構築などの一助になっていると感じています。

図1 周術期管理センターの受診手順