国内留学体験記:秋山正慶

愛知医科大学交換留学

藤田保健衛生大学医学部 麻酔・侵襲制御医学講座 秋山正慶

2/1から3/31まで、愛知医科大学に末梢神経ブロックの研修にいかせていただいたのでご報告します。

山下千鶴准教授、伊藤舞先生に引き続き、三人目で愛知医大に行かせて頂きました。愛知医大は一宮市民病院の研修医二年目の時に二ヶ月間麻酔の勉強をさせて頂いた、なじみのあるところで、当時から働いていた麻酔科の先生、看護師さんや、薬剤師さんが僕のことを覚えていてくれてなんだか嬉しく思いました。また、外科の先生も見覚えのある先生が多く、研修先の先輩方も何人かみえて、とてもアットホームで楽しい雰囲気でした。三年前には末梢神経ブロックを勉強するほどの余裕がなく(全身麻酔や硬膜外麻酔を覚えるために一生懸命であったため)当時は、上級医の先生がエコー下でなんかやっているなという認識でした。

愛知医大では、患者が痛がることが全くないように、オピオイドを術中から血中濃度をモニタリングしながら十分な量を投与し、PONV(post operative nausea and vomiting)予防にドロレプタンなどもほぼ全例で投与しています。その他の消炎鎮痛剤も術中から投与する上、末梢神経ブロックもしくは硬膜外麻酔を併用するために、覚醒時に患者が痛がることはほとんどありません。また、全身麻酔症例は全例、術後可能な限りSICUで30分~60分ほどは管理されます。ここで、疼痛を訴えたりするようであれば、神経ブロックを追加で行ったりするため、術後の対応もしっかりしています。

研修医時代に、神経ブロックなしで愛知医大で覚えた麻酔を同じように行っても、バッキングしたり、患者がとても痛がったりして、なぜ上手くいかないのかと考えたこともありました。それほど、神経ブロックは効果がある手技なのだと実感していましたが、今回の研修でも、神経ブロックが術中から術後急性期にかけて、とても有効な鎮痛方法であると感じました。

しかしながら、末梢神経ブロックは容易ではなく、これを習得するにはエコー下でしっかりと針先を描出できるようになる必要があり、まずこれが難しいと思いました(大事なのはエコーの動かし方で、スライド、ローテーション、チルト)。また、小松徹先生のお言葉で、明石学先生に教えて頂いた
『星座は星空の中から自分のイメージした画を探すため、そのように見えるのであって、エコー下神経ブロックもそれと同じ』という言葉です。
神経はエコーが良くても、どのように見えるかをイメージできていないと同定するのが困難です。そして、オリエンテーションをつけるために、神経周囲の構造を解剖学的に理解する必要があります。このように書くとなんだか難しそうですが、毎回同じ画像を見ていると、だんだんわかってくるものだと感じました。

また、上級医の先生が納得するまで教えてくれたために、二ヶ月間で実際になんとかひとりで4つのブロックが出来るようになりました。それはTAPブロック、斜角筋間アプローチの腕神経叢ブロック、大腿神経ブロック、座骨神経ブロック(膝窩部アプローチ)の4つです。藤田でも愛知医大と同じ、エコーが今後導入される予定なので、まだまだ中級者にも満たないレベルですが、山下先生、伊藤先生と共に是非、患者さんと医局員の皆様に還元したいと思います。

現状の問題点としては、神経ブロックはコストがとれないことと、技術が定着するまで麻酔の導入時間が今よりかかってしまうことがネックです。よって、手術室の運営に支障がでないこと、周囲の理解が得られることを目標に環境を整えていければと思います。

最後に数多くの先生が愛知医大の交換留学に立候補したであろうと思われますが、僕のような下々の人間を留学に行かせて頂き、西田教授や医局員の皆様に感謝しております。また、留学先の藤原祥裕教授をはじめ、愛知医科大学麻酔科の先生方にも大変感謝しております。ありがとうございました!!

今後の愛知医科大学と藤田保健衛生大学の更なる発展と、今回の様な交換留学が今後も継続して行われるような良好な関係が継続されることと、数多くの医局員が色々な分野で活躍できるような、守備範囲の広い麻酔科医集団に当医局が成長することを切に願います。