Medical Emergency Team

Hospital in hospital

Hospital in hospitalとしての役割を最大限果たしていきます。

集中治療部(ICU, intensive care unit)は、院内最重症の患者が集約される部門です。患者さんが疾病を患い医師のところ(hospital)へ来院されます。その患者さんが、主治医ではどうすることもできないくらい重症になってしまうと、主治医は治療に関する相談をするため、ICUへお越しになります。つまり、ICUとは、”Hospital in hospital”の役割を果たしているのです。

当院は日本最大級の規模をもつ医療機関であり、多数の患者さんが入院されています。われわれ、麻酔・侵襲制御医学講座発足時には、病棟患者の急変には、まず専門ではない各科医師が初期対応を行い、ICUに連絡があるのは急変後しばらくしてから、という流れでした。院内での「防ぎえた死(preventable death)」を限りなくゼロにするためには、医療スタッフ全員が、患者の容体の変化を、より早期に認識し、報告、対処するシステムが不可欠です。そこで、Rapid Response System(RRS)が注目され、我々のclosed ICUの運用実績を基盤に、2013年2月、Medical Emergency Team (MET)が発足されました。

MET設立当初は、限定的な要請に留まり、職員数が多いため認知されるまでには時間を要しました。救急・集中治療の観点だけでなく医療安全などの視点を取り入れ、院内スタッフに対し啓発活動を行ってきました。2015年5月の新棟移転時には、安全な患者移送の実現のため、METチームが常時待機し、急変対応を行ったころから、徐々に広く周知されるようになりました。

我々の最終目標は、「防ぎえた死(preventable death)」をゼロにすることです。院内どこにいても患者さんの病態の悪化を早期に察知し、適切なタイミングでMET要請および治療相談して頂けるシステム構築によって実現したいと考えています。日々のICUや麻酔で患者さんに最善かつ高度な医療を提供し、各科医師だけでなく病棟看護師、その他のコメディカルからもMETコールしやすい、治療相談しやすい関係を作ることで、Hospital in hospitalとしての役割を最大限果たしていきます。

重症患者相談システム(MET要請基準を踏まえて)

その技術や知識を生かし重症患者のシームレスな管理を行っております。

残念ながら院内では心肺停止など重大な事態が発生することがあります。それを防ぐためには重症化する前にその兆候を発見し、早期に介入することが必要です。そこで要請があれば診療科を超えて、集中治療医や救急医が駆けつける院内急変対応システムの確立が求められています。

我々、麻酔・侵襲制御医学講座は、院内急変への対応体制としてMedical Emergency Team(MET)を組織し、24時間いつでも患者が発生すれば活動を行なっています。どこの科であろうと、小児であろうと、90歳を超える高齢者であろうと、院内のどこでも要請があったら直ちに駆けつけるシステムを構築しています。対象疾患も広範囲に及び敗血症、アナフィラキシーショック、ARDS、致死性不整脈など様々な一刻を争う疾患に対して迅速に対応しています。

MET要請基準として以下を定めており、院内スタッフ全員が周知徹底するよう啓発活動を行っております。患者が要請基準(図)を満たせば、スタッフは直ちにMET要請(ホットライン)を行います。

 現在(2017/9)MET出動回数は約30回/月であり、院内での予期せぬ急変に対して積極的な医療行為を行なっております。状況が改善すれば主治医や看護師に連絡し引き続き病棟での管理を行いますが、必要であれば我々が主体となって管理している集中治療室(closed ICU)に患者を収容し、迅速に集学的な治療を開始することが可能です。ICUに入室した後は毎朝、主治医、看護師、理学療法士、臨床工学技士などコメディカルスタッフを交えたカンファレンスを行い、治療方針を決定しています。

このように我々は、手術麻酔はもちろんですが、その技術や知識を生かし重症患者のシームレスな管理を行っております。

MET要請基準(10歳~成人)
意識 急激な意識レベルの低下
呼吸 呼吸数30回/分以上または10回/分以下
酸素投与をしてもSpO290%以下の低酸素血症
循環 心拍数40回/分以下の高度徐脈
収縮期血圧80mmHg以下が持続する低血圧
その他 スタッフによる臨床経験上の懸念
MET要請基準(小児:10歳未満
意識 急激な意識レベルの低下
呼吸 呼吸数40回/分以上または15回/分以下
酸素投与をしてもSpO290%以下の低酸素血症
循環 心拍数40回/分以下の高度徐脈
収縮期血圧60mmHg以下が持続する低血圧
その他 スタッフによる臨床経験上の懸念

病棟横断型の新たなチーム医療

医療従事者が対等な立場でそれぞれができる最善を尽くして患者さん中心の医療を実現しようとする体制

藤田医科大学病院の建物は1号棟、2号棟、3号棟、外来棟、A棟、低侵襲画像診断・治療センターで構成されており、病床数は1435床であり、単一の病院として国内最多です。この非常に大規模な病院の院内での急変症例に対し、病棟がどこであるか、主科が何科であるということは一切関係なく、我々、麻酔・侵襲制御医学講座の医師を中心としたチーム(METチーム)で対応し、速やかに且つ高度な治療を24時間体制で行います。院内のどこで起きたどのようなタイプの急変症例に対しても、高い質の医療行為を提供するために、MET要請が入ると我々はポータブルエコー、簡易血液ガス検査装置、気道管理のデバイスや血管確保のデバイスを中心とした器具などを全てMET専用バッグに携え、その時に対応可能なできるだけ多くの人員で瞬時に現場に駆けつけます。

ありとあらゆるシチュエーションに対し、そこでのマンパワーや、使える医療資源に応じて、我々麻酔科医が指揮系統となり、現場にいる看護師、医師、コメディカルのスタッフと共に臨機応変なその時その場所でできる最善の医療行為を行います。

患者の病歴や治療歴、入院や受診理由、どのような場面での急変か。現在どのようなことが起こっているかの情報収集に始まり、病態把握と診断、治療介入をその場にいるスタッフで協力して、より迅速にかつ正確に行う必要があります。

一刻を争うような環境下においても、我々麻酔科を中心としたコメディカルも含む全てのスタッフ間で、自由に発言や意見交換ができる雰囲気作りを大切にし、我々スタッフが、互いに対等な立場で連携して、患者さんを助けるという1つの目標に向かって日々活動を続けております。

このように、病棟の場所に関係なく急変症例に対して、医療従事者が対等な立場でそれぞれができる最善を尽くして患者さん中心の医療を実現しようとする体制は、まさに病棟横断型の新たなチーム医療と言えるのではないでしょうか。