当講座は2008年3月1日に全く新規に開設された講座あり、初代講座教授として、西田 修が着任しました。
手術はいわば「予定された外傷」であり、その外科的侵襲から生体を防御するために行う行為が麻酔です。よって麻酔学とは生体防御の学問であり、麻酔行為自体も、血管確保、気道確保から始まり、体液・輸液管理、出血や心抑制などに対する大胆かつきめの細かい循環管理と患者の状態に合わせた人工呼吸管理などを中心とした全身管理に至るまで、ライフサポートのエッセンスに満ちています。侵襲には、手術以外にも感染、外傷、熱傷など様々な要因が含まれますが、各種侵襲による生体反応には共通点が多く、麻酔学は「侵襲制御医学」であるともいわれ、これを教室の講座名としています。単に手術室の中の手術麻酔だけにとどまらず、麻酔を核とした全身管理を広く行い、付加価値の高いプロ集団としての麻酔科医の育成に努め、集中治療を含めた領域で幅広く診療・教育・研究を行うことを目標としています。
2015年5月からは、全科対応のICUとして18床に増床しています。ICUの運営形態には、各科の主治医が中心となって運営されている、いわゆる各科管理のopen system ICUと、専従、専任の集中治療医が中心となって管理するclosed system ICUのスタイルがあります。当大学ICUでは、麻酔・侵襲制御医学講座医局員が中心となって管理するclosed systemの運営形態をとっています。当講座の集中治療専門医が主体となって、膜型人工肺による呼吸管理や経皮的人工心肺装置を用いた循環管理をはじめとして、急性期からの積極的な栄養管理、積極的な呼吸リハビリテーション、病態にあわせた急性血液浄化療法など高度先進的な全身管理を行っています。
急変時の対応や、呼吸、循環、代謝管理の知識は集中治療医だけでなく全ての臨床医にとって必須の知識であるため、学生、初期研修医への教育にも重点を置いています。毎年、多くの学生や研修医がICUでの研修を選択し、重症患者における全身管理の基礎を学んでおります。教育には時間と労力がかかりますが、「教育こそすべて」の教室理念のもと、どんなに忙しいときも医局員全員で真剣に教育に取り組んでいます。
3名ではじまった当講座も今や35名(2019年4月現在)となり、現在は臨床のみならず臨床に基づいた基礎実験も本格的にはじまっています。今後はさらに人員、設備を充実させ、世界に通用する集中治療、周術期管理、基礎研究ができる環境を作り上げることを目標としています。
2019年4月