ごあいさつ

藤田医科大学医学部 麻酔・集中治療医学講座
講座教授 中村 智之

講座教授 中村 智之

このたび、2025年4月1日付で藤田医科大学医学部 麻酔・集中治療医学講座の講座教授を拝命いたしました中村智之と申します。麻酔科医として、集中治療医として、そして教育者として、次世代の麻酔・集中治療を担う人材の育成という重大な責務を担うこととなり、身の引き締まる思いで日々臨んでおります。

本講座は、2008年に西田 修前教授を初代教授とし「麻酔・侵襲制御医学講座」として創設されました。以来17年にわたり、麻酔科学を基盤とする全身管理、集中治療、急性期医療の分野において、先進的な教育・診療・研究を展開してまいりました。2025年度からは、これまでの歩みを礎としつつ、今後のさらなる発展と医療の多様化を見据え、「麻酔・集中治療医学講座」へと講座名称を改め、新たな一歩を踏み出す運びとなりました。

私自身は、西田前教授の着任とともに本学に参画し、多くの仲間とともに激動する医療の現場の最前線で研鑽と挑戦を重ねてきました。特に新型コロナウイルス感染症のパンデミック期には、他施設では対応が難しい超重症呼吸不全症例に対し、V-V ECMOを中心とした高度な集中治療を展開し、全国有数のECMO実績を有する体制を確立しました。ポストコロナの現在においても、ECMOカーを活用した超重症呼吸不全患者の搬送体制を整備し、当科ICUは院内にとどまらず地域医療の最後の砦としての役割を果たしています。

手術麻酔においては、術中の安全確保はもちろんのこと、術前評価から術後管理に至るまで一貫して関与し、麻酔科医ならではの繊細かつ包括的な全身管理を提供しております。ハイリスク患者の周術期においては、麻酔科医がチーム医療のハブとなり、術中管理のみならず、術後の集中管理や疼痛管理に至るまで責任をもって関わります。さらに、急性血液浄化療法やECMOといった高度医療技術を駆使した周術期管理を通じて、外科系診療科との強固な信頼関係を築いています。また当院では、多数のロボット支援手術や各種臓器移植、困難気道を有する小児手術など、全国的にも稀有な高度・特殊手術が日常的に行われており、麻酔科医として極めて貴重かつ高度な診療経験を積むことが可能です。

教育においては、「重症管理のできる麻酔科医の育成」を最大の使命と位置づけています。近年、薬剤やモニタリング機器、気道管理・血管アクセスデバイスの進化により、麻酔は「危険な技術」から「標準的な医療手技」へと大きく変貌を遂げております。麻酔科学は、「安全な麻酔の提供」から「周術期を通じた全身管理の専門領域」へと移り変わり、麻酔科医には他職種・他診療科との連携を前提とした新たな役割とが求められています。専門医取得だけでなく、その先を見据えた「重症管理のできる麻酔科医の育成」が我々の使命だと考えています。藤田医科大学病院は約1,400床を有する日本最大の急性期病院であり、多彩かつ豊富な症例経験を通じて、若手医師が成長できる環境が整っています。

研究においては、臨床現場で生じた疑問に真摯に向き合い、それを起点とした実践的なテーマを重視しています。当科ICUの治療の柱でもある急性血液浄化法においては、多臓器不全を引き起こす過剰な炎症反応を“おとり”臓器を用いて体外に誘導し制御することを目的とした全く新しい血液浄化法を考案しました。これは、多施設共同研究を経て、2024年11月に敗血症に対する適応で製造販売承認を取得しました。コロナ禍においては、当院独自の新しいV-V ECMO管理法を確立し、従来の方法では達成できない高い酸素化を実現しています。周術期麻酔管理、急性血液浄化療法、V-V ECMO、重症患者の栄養管理、早期リハビリやPICS対策など、多数の臨床研究・基礎応用研究を国内外に発信しています。若手医師にも早くから研究に関わって頂き、学会発表・論文執筆を通じて成長する機会が豊富にあります。

最後に、これから麻酔科医を志す皆さんへ。
藤田医科大学 麻酔・集中治療医学講座には、皆さんが「なりたい麻酔科医」になるための最良の環境と多数の機会が揃っています。ここには、全国屈指の症例数と、妥協なき臨床・教育・研究が融合した実践の場があり、そして共に成長し支え合える仲間がここにいます。まずは気軽に見学に来てみませんか?きっと、麻酔を軸とした全身管理の奥深さと面白さを感じていただけると思います。皆さんとお会いできる日を、医局員一同、楽しみにしています。