熊本地震医療派遣:勝田 賢

4/25(月)~8(木)までの4日間、熊本地震に対する医療支援チーム第3陣の一員(医師2名、看護師3名、事務1名)として現地での活動を行いました。

我々は熊本市西区役所を拠点とし、市内で活動する医療チームの統括を行いました。西区役所に勤務している保健師さんが30年前に当院で勤務していたらしく、その伝手で震災発生直後から現地での活動を行えるようになったとのことです。毎朝、10時からブリーフィングを行い、各避難所を分担して回診をし、その活動状況の把握や翌日のチーム配置を地元の保健師さんたちと協力し行いました。

現地のライフラインはほぼ復旧しており、コンビニやスーパーも品数は少ないものの通常通りの営業をしておりました。西区の被害状況は比較的軽度ではありましたが、独居の高齢者などは依然として避難所での生活を余儀なくされておりました。救援物資はむしろ余るほど供給されており、近隣の開業医も概ね開いていたため、医療支援は思ったほど必要ではありませんでした。

避難所をいくつか回診しましたが、日中は高齢者や子どもが少数残っているのみでした。ただ、夜間になると自宅の片付けや仕事に行っていた人々が帰ってくるため、避難者の数は昼と夜でかなり差がある様子でした。我々が活動している期間は西区エリアで約3000人の避難者がおりました。徐々に避難者数は減少しており、避難所もどんどん閉鎖され、集約化が行われておりました。

インフルエンザやノロウイルス感染者も報告はされておりましたが、手袋やマスク、エプロンなどの感染防御用品に加え、手指消毒用アルコールや次亜塩素酸も供給されており、適切な対処で蔓延することなくコントロールされており感心致しました。また、車中泊や避難所生活でDVTの発生頻度が増加しているとの報告を受け、弾性ストッキングの配布を行いました。さらにDVTチームが結成され、各避難所でエコーによるDVT検索も実施していただきました。ある避難所では20名中、6名にDVTが発見され、近隣病院を紹介されておりました。

今月いっぱいで西区エリアの医療チームはほとんどが撤退となり、当院も5/9までの活動でその後は地元の医師たちに主導権を譲ることになる予定です。今後は医療支援よりも自宅への帰宅が困難な方へ住居の提供やライフラインの完全な復旧などが課題になりそうです。

全国各地から様々な業種の人々が熊本周辺に来られているため、宿泊場所の確保に難渋しました。我々は福岡県大川市という場所に宿泊したため、毎朝車で2時間半かけての移動であり、予想以上に体力勝負でした。

この度は日常診療では得られない貴重な経験をさせていただきました。外勤や当直業務を代わっていただき、誠にありがとうございました。深く御礼申し上げます。

藤田保健衛生大学医学部 麻酔・侵襲制御医学講座 勝田 賢

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熊本城敷地内

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避難所での診察風景

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活動記録

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医療チームが集合して朝のブリーフィングを行っている様子