当科の役割

集中治療と手術麻酔の共通点

侵襲の制御

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集中治療と手術麻酔は「侵襲(ストレス)の制御」という点で共通します。生体は侵襲を受けたとき、内部環境を守り、その恒常性(ホメオスターシス)を保つために、必ず防御の反応を起こします。生き延びるために、呼吸、循環、代謝、内分泌、免疫などの機能を大きく変化させます。本来、生体反応は防御機構であるはずですが、侵襲の程度が大きい場合や、持続する場合には過剰に反応し、臓器不全を引き起こすことがあります。これらの過剰反応や、その元となる外部からの侵襲をコントロールするのが、「侵襲制御医学」です。

術中の手術侵襲やそれに対する過剰な生体防御反応をコントロールが「手術麻酔」です。一方、集中治療の対象となる患者は、何らかの臓器が既に重大な侵襲を受け、ホメオスターシスが破綻しかけています。「集中治療」では、機能不全に陥った臓器を薬物療法や人工代替臓器を積極的に用いて強力に支持するとともに、既に加わった侵襲のみならず、二次的な侵襲をコントロールし、全身管理を行います。

 

生きている人すべてが対象

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手術麻酔」は、手術が必要なすべての患者が対象になります。「集中治療」は、集中治療を行うことにより回復が見込まれる重篤な急性臓器不全の患者すべてが対象となります。特に集中治療室は、病院内や地域における医療の最後の砦であり、特に重篤な患者が対象になります。両者ともに、適応があるならば年齢は関係なく、生まれたばかりの新生児から100歳を超える超高齢者まで、生きている人すべてが対象になります。また、疾患や対象臓器も関係ありません。そのため、原疾患、既存症、既往歴を含め、あらゆるリスクの可能性があるため、すべての疾患に精通していなければなりません。

“横割り”の医療

一般的な診療科別の医療は、臓器別に高度に細分化された”縦割り”の医療です。特定臓器に対する解剖の知識や専門技術が要求され、専門臓器以外に触れる機会は少なく、専門外の臓器の管理が疎かになる可能性があります。

それに対し、集中治療・手術麻酔は、特定臓器に偏らずに広く全身管理を行う“横割り”の医療です。呼吸、循環、代謝などの主要臓器の急性機能不全に対し、内科系、外科系を問わず、また疾患や対象臓器も関係なく、病態生理に基づいて横断的に全身管理を行います。そのため、われわれは特定の臓器に偏らない中立の立場であると言えます。急性期医療の現場で、特定の臓器障害に捕らわれることなく、広い視野のもと、治療や全身管理を行います。

凝縮されたライフサポートのエッセンス

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手術麻酔や集中治療には、ライフサポートのエッセンスが凝縮されています。気道確保、血管確保にはじまり、意識管理、呼吸管理、循環管理、輸液・栄養管理、各種薬剤の使い方など、これらは基本的な医療技術・知識であり、すべての医療行為における重要な土台となります。

手術麻酔では、比較的リスクの少ない患者も多く含まれ、術前診察であらかじめ患者の病態を詳細に把握し、術中の経過はある程度予想ができるため、学生、前期研修医、コメディカル、パラメディカルなどの重要な教育の場となります。すなわち、手術麻酔は「全身管理の基本」となります。一方、集中治療では急性臓器不全に陥っている重症患者を対象としますが、手術麻酔と同じく基本的な全身管理を行った上で、人工呼吸器や急性血液浄化法などの人工代替臓器を積極的に用い、さらに高度なライフサポートを行います。既に危機的状況であるため、一刻の猶予もなく、病態の把握と治療を同時進行しなければならないことも多く、さらに不測の事態に対し的確に対応していかなければなりません。そのため集中治療は、「全身管理のアドバンス版」であり、後期研修医やすべての診療科の若手医師の教育の場として最適といえます。